これ問題だなと思っていたら変わっていました!在留資格「介護」取得ルートを全解説
外国人介護職員雇用に適した「在留資格」って?
外国人介護職員を雇用する際に気になるのが、在留資格とその在留期間の上限でしょう。
介護で働く外国人の在留資格は数あれど、最上位に位置するのが在留資格「介護」です。在留資格「介護」をとると、在留期間の上限はなくなり、家族帯同可能、給与も日本人と同等以上になるというプラチナチケットです。ぜひ日本で働く外国人介護職員の皆さんはこれを目指していただきたいと心より願うばかりです。
この在留資格を取るためのルートが限定されていたことは、実はあまり知られていないのではないでしょうか?
すでにご存知の方は、平成時代から介護人材確保に苦労してきた採用担当されていた方、または技能実習で介護人材の受入が可能になったころから取り組んでいる監理組合の方ではないかとご推察します。私もルート限定されていることを知ったとき、我が目を疑ったことをよく覚えています。
そんな限定が解除され、「介護福祉士」取得者はルートを問わず、在留資格「介護」を取得できるようになっています!今回はそんな在留資格「介護」取得ルートを全解説します。
限定があった頃の在留資格「介護」取得ルート
まずは、在留資格「介護」が認められた経緯をご紹介します。
介護福祉士の国家資格を取得した留学生の在留資格「介護」を創設する「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」が平成28年11月18日に成立し、同月28日に公布され、平成29年9月1日から施行されました。
法律が施行されるときには、法律によっては省令により基準を定める場合があります。「出入国管理及び難民認定法」には上陸基準省令が定められており、その省令で「介護福祉士」取得ルートが実は限定されていました。
上陸基準省令では、「申請人(外国人介護人材)が社会福祉士及び介護福祉士法(昭和六十二年法律第三十号)第四十条第二項第一号から第三号に該当すること。」となっており、この第四十条第二項第一号から第三号というのが大学もしくは専門学校で介護福祉士養成コースを修了しているということでした。そのため、在留資格「介護」に変更できるのは、次のルートで介護福祉士を取得した方のみに限定されていました。
養成施設ルート
この限定が解除されたのです。
令和2年4月1日に在留資格「介護」の上陸基準省令が改正され、介護福祉士の資格を取得したルートにかかわらず、在留資格「介護」が認められることとなりました。そもそもなぜ養成施設ルートのみに限定していたのか、実務をしている介護施設の人事としては、理由も理屈もわかりませんでした。おそらく在留資格「介護」は高度人材の在留資格という扱いなので、アカデミックな専門家教育を受けた養成施設ルートの介護福祉士は高度人材として認めるが、実務ルートは高度人材ではないという判断だったと思います。
しかし、介護という対人援助の仕事であるということから、すでに実務ルートも専門家として扱っていた厚生労働省の見解とも違います。介護福祉士の受験資格が変更される際に、「介護職員実務者研修」修了の要件を介護福祉士受験資格として認めて、アカデミックな観点、専門家としての必要な高度知識を補完している制度設計から考えても、実務ルートを認めないのは、外国人への差別的要件であることは言うまでもなく、エッセンシャルワーカーとして現場で活躍している実務ルートの多くの日本人介護福祉士の専門性を認めていないということで、非常に失礼な判断だと思っておりました。
変更後の在留資格「介護」取得ルート
「新しい経済政策パッケージ」(平成29年12月8日閣議決定)において、「3年以上の実務経験に加え、実務者研修を受講し、介護福祉士の国家試験に合格した外国人に在留資格(介護)を認める」という方針が閣議決定され、「養成施設ルート」以外のルートで介護福祉士となった者についても、在留資格「介護」を認めることが決定されました。
変更内容はこちらです。
(出典)厚生労働省 外国人介護人材の受け入れについて 外国人介護人材 受入れの仕組み
この変更により外国人介護人材が介護福祉士を取得し、在留資格「介護」として永続して介護の仕事をし、家族と一緒に日本で暮らす道は拡大されたものの、3年実務の受験条件と技能実習、特定技能の在留期間の上限5年と比べると、介護福祉士の受験チャンスは最大2回ということでまだまだ狭き門であるのは言うまでもありません。
経済連携協定(EPA)ルートについては、介護福祉士国家試験に合格しなかった場合でも、一定の条件を満たす場合には、所要の手続き及び審査を経て、就労・研修しながら次年度の国家試験合格を目指すこと等を可能とするため、希望する場合は追加的に1年間の滞在が認められています。
しかし、技能実習や特定技能の在留資格から介護福祉士国家資格の取得を目指す実務経験ルートには現在、介護福祉士国家試験で不合格になった場合の措置は設けられていません。ぜひ当局には経済連携協定(EPA)ルートのように、一定の条件を満たす場合は、特定技能の在留資格から介護福祉士国家資格の取得を目指す実務経験ルートにも、次年度の国家試験合格を目指すための滞在延長を認めることを検討していただきたいと思います。
なお、試験時間延長、ふりがな入りの試験問題については、外国人受験生の希望により対応されます。
特定技能人材登用への想い
冒頭で説明した通り、介護福祉士を取得し在留資格「介護」とはすなわち、介護職として働く限り入出国自由、家族も帯同できるというプラチナチケットです。
特定技能の人材紹介をするなかでよくあるのが「若い女性を希望する」というオーダーです。日本人であっても、外国人であっても、結婚や出産などのライフイベントは20歳台・30歳台に発生することは明白です。そんな中で介護福祉士を取得していると、ライフイベントに応じて、住む場所や仕事を母国と日本の二元的に考え、人生設計していけることになります。
日本の高齢化、生産人口の減少を考えていくと、とにかく外国人介護福祉士を養成して、上限期間を気にせず就労をできる環境を作ることが、わが国の高齢者福祉を継続させるには良策だと思うのですが、皆さんはどう思われますか?
この記事を書いた人
武中朋彦
ジョイスリー株式会社代表
大学卒業後、IT企業にてシステムエンジニア(SE)として勤務。SE業務の傍ら、個々の社員のスキルアップを目指し、人事と連携してコーチングを実践、人材活性化に取り組む。
その後、福祉業界に転職。各種福祉サービスの整備、職員採用、サービス開始まで一連の事業開発に従事したのち、人事・事業開発部長として延べ1000人以上の採用募集、面接を実施する