国立メダン職業訓練校 日本語講師より、インドネシアでの介護人材育成レポート
日の出医療福祉グループは、将来の介護人材不足に対応するためインドネシア政府労働省と連携し、インドネシアのスマトラ島にあるメダン国立職業訓練校で、日本語と介護技術を教える介護人材の育成プログラムを行っています。今年度4月から、第1期となる修了生が日の出医療福祉グループの事業所を中心に就業を開始しています。また、11月~1月にかけて2期生が来日し就業します。来年4月の就業に向け、3期生も日本語の試験や介護の試験に合格を目指しています。
今回は、日の出医療福祉グループから派遣されている日本語教師で、国立メダン職業訓練校で日本語を教えている北野先生からのレポートです。
Contents
介護職の経験を活かしながら、日本語教師として日本で活躍できる介護人材を育てたい
日本語をインドネシアで教えるようになったきっかけ
元々、他法人で介護職を5年ほどやっていました。介護老人保健施設・デイサービス・デイケアで勤務し、2年前に介護福祉士の資格も取得しました。
少子高齢化が進んでいく中、介護人材不足は顕著になり、外国人の介護士が必要になってくるのは必然だと感じるようになりました。そういった時代の要請にこたえられるよう、介護福祉士資格を持つ私が日本語教師資格をダブルライセンスで持ち、介護の専門性を土台とした介護人材への日本語教育に携わっていこうと考えていました。
そういった中で、日の出医療福祉グループではインドネシア政府と連携して介護人材を育成していくプログラムを実施することになり、そこに参加することになりました。
教えるときに気を付けていることは
インドネシアでも民間企業を中心に日本語教育が行われています。ですが、介護人材を育成する上で、介護現場を知っている日本語教師はあまりいないと思うので、教科書の内容をそのまま教えるだけではなく、介護現場や利用者様とのコミュニケーションで役に立ちそうな表現も取り入れるように心がけています。なぜそのような表現を日本人は使うのか、という背景や理由も、できる限り伝えて理解してもらう工夫もしています。
ほとんどの日本語学校は、インドネシア人教師が教えています。日本人の日本語教師が直接活きた日本語を伝えるということも、本プログラムの特徴になっています。
インドネシア国立職業訓練校でのカリキュラム内容は
インドネシアの看護大学や看護高校を卒業した生徒が中心となっている、半年間のプログラムです。一部の生徒を除いて日本語の学習は全く初めてです。半年間全寮制の環境で、集中して日本語の習得に取り組みます。そして、日本で仕事ができる目安となるJFTベーシック試験、特定技能介護(在留資格)に必要な介護日本語評価試験と、介護技能評価試験に合格することを最優先に取り組んでいます。
日本語の教材は、国際交流基金が発行している「いろどり」という教科書を使用しています。外国人向けの日本語の教科書はいろいろありますが、「いろどり」は、コミュニケーションを重視した教材なので、例えば、断りの表現である「~はちょっと…」など、日本人が好む、はっきりとした言い方をしない、婉曲表現なども取り上げられています。
インドネシアの生徒を教えられていて感じること
とにかくみんなまじめで、素直に何でも吸収しようとするので、教えていてやりがいがあります。日本に対して夢を持っている生徒ばかりなので、興味を持って意欲的に授業を受けてくれていると感じます。試験に合格しないと日本で就業できないので、こちらも課題をたくさん出しますし、毎日テストもしますが、誰も音を上げずに一生懸命、取り組んでくれます。私も前職では医療介護業界で人事担当をしていたこともありますが、本当に全員採用したくなるような生徒たちです。
今後の目標について教えてください。
現在、3期生を担当していますので、まずは生徒が一人でも多くJFTベーシックに合格し、日本で働くという夢を実現できるよう、最大限サポートしていきたいです。
生徒たちが、無償教育を受けられるのは、雇用いただける企業・法人様が、学費やビザなどの費用を紹介料としてご支援いただいているからです。そういったことをしっかりと生徒に理解してもらうように、日ごろの授業でも伝えていきます。日本での勤務が決定した生徒には、責任と自覚をもって勤務に取り組めるように、人材育成に取り組んでいきます。
この記事を書いた人
北野文
日の出医療福祉グループ 国立メダン職業訓練校駐在 日本語講師
介護福祉士資格と日本語教師資格のダブルライセンスをもつ。
前職で医療福祉業界での人事を担当。介護現場での外国人人材の就労支援するなかで、実践の即した日本語教育の必要性を感じ、現在インドネシアにて介護人材育成に取り組んでいる。