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2023-11-20

企業人事担当者から見た「技能実習生の失踪問題」

技能実習制度の概要

「外国人技能実習制度は、1960年代後半頃から海外の現地法人などの社員教育として行われていた研修制度が評価され、これを原型として1993年に制度化されたものです。

技能実習制度の目的・趣旨は、我が国で培われた技能、技術又は知識(以下「技能等」という。)の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与するという、国際協力の推進です。
制度の目的・趣旨は1993年に技能実習制度が創設されて以来終始一貫している考え方であり、技能実習法には、基本理念として「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(法第3条第2項)と記されています。

技能実習制度の内容は、外国人の技能実習生が、日本において企業や個人事業主等の実習実施者と雇用関係を結び、出身国において修得が困難な技能等の修得・習熟・熟達を図るものです。期間は最長5年とされ、技能等の修得は、技能実習計画に基づいて行われます。」
※JITCO 公益財団法人 国際人材交流機構HP 「外国人技能実習制度とは」より

失踪問題の背景

上記サイト内で、「技能実習制度の目的・趣旨は、我が国で培われた技能、技術又は知識(以下「技能等」という。)の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与するという、国際協力の推進です。」と説明されています。

しかし、現状では、「日本の労働力不足を解消する役割を持つ制度」と解釈している方も多いのではないでしょうか。実際に、専門業者の方から技能実習生の受け入れを提案された際、ほぼ100%の業者担当者の方が「人材にお困りはございませんか?であれば、技能実習制度がお勧めです」と、人材不足にフォーカスをあてた提案をされます。
そんな「人材不足問題を外国の方々に助けてもらう」という印象のまま、「技能実習生が9000人も失踪している」と耳にした私は、「辛い仕事をさせられたのかな」「待遇が悪い職場だったのかな」等と想像していました。

失踪の原因(法務省の資料より)

そこで、法務省が出している「外国人技能実習生の失踪を発生させないために」というページを参考にしたい。 ※そもそもこのページがある事に違和感を覚えました。

そこで記載されていた内容を抜粋してご紹介します。
(1)賃金等の不払いなど、実習実施側の不適切な取扱い
(2)入国時に支払った費用の回収等、実習生側の経済的な事情

失踪を発生させないために日頃から配慮していただきたいこと

①外国人に対してはあらかじめ業務内容をよく説明し、仕事内容について納得感をもってもらうことが必要です。
②トラブルを未然に防ぎ、気持ちよく働いてもらうためにも、給料の仕組みや控除の理由を丁寧に説明してください。
③異文化への理解を深め、お互いを尊重することで誤解が生じないようにすることが重要です。相手も自分と同じ価値観や指向だろう、という前提に立たないことが大切です。
④文化等の違いから、指導やアドバイスをしただけのつもりでも、相手に嫌な気持ちをさせてしまうことがあるので、注意をして接するようにしましょう。

失踪を防ぐための配慮点

つまり、9000人も失踪している理由は、
(1)受け入れ企業側が、実習生に対して「やってはイケない事」をしている
(2)実習生の「お金に関する問題」 と解釈できる。

それを踏まえ、対策を再度検討してみると、
業務内容をよく説明し、仕事内容について納得感をもってもらうこと
給料の仕組みや控除の理由を丁寧に説明すること
相手も自分と同じ価値観や指向だろう、という前提に立たないこと
異文化交流を意識して、注意をして接すること

人事担当者としての考察

違和感が強いのは私だけだろうか……。 結局は受け入れ側の企業が、まともな雇用をおこなっていれば、起こらないのではないかと考えてしまいます。 実際に企業人事を担当している私が考える対策としては、
・受け入れ企業に対する審査の実施
・受け入れ企業に対する「本来目的」の周知
・仲介業者の適正な資格チェック 等、企業側をチェックする公的な機関の役割を強化する必要
があると考えます。国内人材の雇用、国外人材の雇用ともに企業と労働者の相互理解は重要ですが、特に外国人人材については、異文化の理解、雇用慣習の違いなどあるので、より公平で「まともな」雇用を実施していくような公的な取り組みの密陽性を感じます。

まとめ

企業の実務や取り組みを見直し、公的な機関の役割を強化することで、技能実習生の失踪問題の解決を目指すべきだと強く感じた事案です。
現在入管庁で議論されている入出国在留管理庁 技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議でも同様のことが言われており、その必要性を再確認しました。

この記事を書いた人

川口幸祐

株式会社 Let’s support 代表取締役
大学卒業後、スポーツメーカー、広告代理店での勤務を経て、株式会社Let's supportを設立。
ビジネスに悩む経営者から、就職に悩む学生まで、これまで2000社以上、述べ3000人との”課題解決対話”の経験を活かし、人々の幸せを追求するコンセプトのもと、人事支援事業にて関西を中心に活躍。