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2023-11-27

特定技能人材を雇い入れるときに登場する「登録支援機関」ってなにするの?

特定技能制度において、登録支援機関という名前をよく耳にされるかと思います。登録支援機関とは何なのか?特定技能人材を受け入れるには必ず契約をしなければならないのか?役割や選び方、支援内容についてご説明したいと思います。

特定技能人材を受け入れるための支援について

まず、特定技能人材の受け入れを行う企業等は「受け入れ機関(特定技能所属機関)」となり、受け入れ機関が特定技能人材を受け入れるための基準や義務が設けられています。

受け入れ機関が特定技能人材を受け入れるための基準

1.特定技能人材と結ぶ雇用契約が適切
  (例:報酬額が日本人と同等以上)
2.受け入れ機関自体が法的な問題がない
  (例:5年以内に出入国・労働法令違反がない)
3.特定技能人材を支援する体制がある
  (例:特定技能人材が理解できる言語で支援できる)
4.特定技能人材を支援する計画が適切である
  (例:生活オリエンテーション等を含む)

受け入れ機関の義務

1.特定技能人材と結んだ雇用契約を確実に履行する
  (例:報酬を適切に支払う)
2.特定技能人材への支援を適切に実施する
  →支援については、登録支援機関に委託も可
3.出入国在留管理庁への各種届出をする
(注)1~3を怠ると特定技能人材を受け入れられなくほか、出入国在留管理庁から指導、改善命令を受けうることがあります。

登録支援機関は、受け入れ機関の義務2の「特定技能人材への支援を適切に実施」を受け入れ機関に代わって行うことが可能な機関です。登録支援機関に支援の全部を委託した場合、受け入れ機関が特定技能人材を受け入れるための基準3の「特定技能人材を支援する体制あり」も満たしたことになります。

特定技能人材の受け入れ機関と登録支援機関の関係

特定技能人材、特定技能受け入れ機関、登録支援機関の関係は以下の図のようになります。

(資料)外務省|登録支援機関について

受け入れ機関は、特定技能人材を適切に支援しなければならず、支援の内容は多岐にわたり専門的な知識を要する内容も含まれるため、自社で全ての支援を行うことは容易ではありません。そのような場合に、支援の委託を受けて代わりに特定技能人材の支援を実施するのが登録支援機関の役割です。

登録支援機関は、出入国在留管理庁長官の登録を受け、定められた要件を満たした事業者です。受け入れ機関が行う支援を代わりに行うことになるので、しっかりとした支援体制が整っているかどうかは登録支援機関を選ぶ大切な基準になるでしょう。

特定技能人材への具体的な支援内容

特定技能人材に対して行う支援には、「義務的支援」と「任意的支援」の2種類があります。
義務的支援はその全てを必ず行わなければならず、支援計画書には全ての義務的支援を記載する必要があります。
※特定技能人材を受け入れる際には支援計画書の作成が必要です。支援計画書は受け入れ機関が作成することとなっていますが、登録支援機関は作成のサポートをすることができます。以下は、特定技能人材への主な支援内容となります。

(資料)出入国在留管理庁|在留資格「特定技能」について

①事前ガイダンスの実施

義務的支援
・業務内容、報酬額、労働条件
・日本で行える活動の範囲
・入国の手続き
・保証金や違約金、特定技能雇用契約の申込みの取り次ぎ、活動の準備金等の契約や徴収費用について、確認及び説明を詳細にする必要があります。
・支援計画書に記載されている内容についての説明

上記内容を、特定技能人材が理解できる言語によって行う必要があり、必ず、体面もしくはテレビ電話等の互いの表情が見える状態で行う必要があります。
また、事前ガイダンスで提供する情報には、労働条件など特定技能時雇用契約の締結前にあらかじめ外国人本人が把握することが望ましい情報が含まれていることから、特定技能雇用契約の締結時以前に行うことが望まれます。

任意的支援
・入国時の日本の気候や適した服装
・本国から持参すべきもの、持参した方がよいもの、持参してはならないもの
・入国後に必要となる費用やその用途
・就業に際し企業から支給されるもの
このような情報提供も行えるとよいでしょう。

②出入国する際の送迎

義務的支援
特定技能人材が入国する際、上陸手続きを受ける港または飛行場から特定技能受け入れ機関の事業所もしくは当該特定技能人材の住居間の送迎の義務があります。
また、出国する際も出国手続きを受ける港もしくは飛行場まで送迎し、保安検査場の前まで同行して入場を確認する必要があります。
※一時帰国の際は、出入国の支援を行う義務はありません。

任意的支援
事業所までの交通手段の説明や緊急時の連絡先の共有など。

③住宅確保・生活に必要な契約支援

義務的支援
住宅の確保に加え、金融機関の口座開設、携帯電話の契約、電気・ガスなどのライフラインの契約について、特定技能人材に必要書類の提供や窓口案内、窓口への同行といったサポートをします。

任意的支援
特定技能雇用契約の解除後に、必要に応じて住居確保の支援を行うことが望まれています。

④生活オリエンテーションの実施

義務的支援
日本での生活一般に関する事項、医療や医療機関に関する事項、公的機関に対する手続き等に関する事項、防犯・防災等に関する事項、法令違反の対応や法的保護に必要な事項、支援に関する事項を、特定技能人材が不自由なく日本で生活できるよう当該外国人が十分に理解できる言語で最低でも8時間以上行う事が義務付けられています。

⑤公的手続等への同行

義務的支援
行政手続きや携帯電話の契約などを行う際、特定技能人材たけでは書類作成や内容の理解が困難な場合は、窓口の案内や説明だけではく、実際に手続きに同行してサポートを行うことが求められます。

⑥日本語学習機会の提供

義務的支援
特定技能人材が日本での就業や生活に困らないよう、日本語学習の機会の提供が求められます。就労する地域の日本語教室等の情報提供や、自主学習のための日本語学習教材やオンライン日本語講座の情報提供、合意のもと登録支援機関が日本語講習を提供することなどの学習の機会を提供します。

任意的支援
日本語試験の受験支援と資格取得者への優遇措置を作ったり、受講料の補助などの経済的支援を行うことが挙げられます。

⑦相談・苦情への対応

義務的支援
特定技能人材から職業生活、日常生活又は社会生活に関し、相談又は苦情の申し出を受けた時は、遅滞なく相談又は苦情に適切に応じるとともに、当該外国人への助言、指導その他の必要な装置を講じなければなりません。

任意的支援
特定技能人材が勤務中や通勤時に怪我や病気、死亡した際に、対象者の家族に対して労災保険の制度の周知や手続きのサポートを行うなどの支援や、あらかじめ相談窓口の一覧表を作成し渡しておくなどの支援があります。

⑧日本人との交流促進

義務的支援
特定技能人材が地域社会で孤立することを避けるため、日本人との交流の場を積極的に設ける支援も重要となります。地域公共団体やボランティア団体が主催する地域住民との交流の場に関する情報提供や、町内会をはじめとした自治体の案内や参加サポートなども必要に応じて行います。

任意的支援
特定技能人材が行事への参加を希望する場合、業務に支障がない範囲で有給休暇の付与や勤務時間について配慮すること等が挙げられます。

⑨転職支援(非自発的離職の場合)

義務的支援
特定技能人材の責めに帰すべき事由によらないで、特定技能雇用契約を解除される場合においては、転職先を探すサポートが求められます。所属する業界団体や関連企業を通じて、次の受け入れ先に関する情報を入手し提供することや、職業安定所、職業紹介事業者等を案内し、必要に応じて特定技能人材に同行し、次の受入先を探す補助を行わなければなりません。

任意的支援
特定技能人材が求職活動をする際、有給休暇を付与すること、離職に際して必要な行政手続き(国民健康保険や国民年金など)の情報の共有や、同行。

⑩定期的な面談・行政機関への通報

義務的支援
四半期ごとに1回以上、支援責任者等が特定技能人材やその上司と定期的に面談し、生活オリエンテーションの内容や働いている環境を確認し、労働関係法令に違反等が考えられる場合は、関係行政機関へ通報する必要があります。

任意的支援
問題が発生した時に特定技能人材自らが通報できるように、行政などの関係当局の窓口の一覧をまとめ、あらかじめ提供しておくという支援が望ましいといえます。

登録支援機関への委託できること

特定技能人材を受入れる機関は、これらの支援計画の作成と実施を行う必要がありますが、これらの一部または全てを登録支援機関に委託することも可能となっています。
1号特定技能人材の支援計画を作成し運用していくことは、特定技能の外国人材を安定的に確保し、継続的に働いてもらう環境づくりのために大変重要といえます。要件をクリアしている場合は、支援計画の全てを自社で行うことも可能ですが、準備にかかる時間や、受入れる外国人の母国語での対応、義務的支援を法令に準拠して実施しなければならない(法令違反リスク)等の課題があることから、外国人労働者の受入れ実績や支援に割ける人員が不足している場合は登録支援機関へ支援の委託をすることをお勧めします。

自社支援できる要件

特定技能人材の支援を登録支援機関に委託しないで自社で行う場合、下記の要件を満たす必要があります。

1.中長期在留者(外国人)の受入れ実績がある
下記の3つのいずれかの条件を満たす必要があります。
①過去2年間に中長期在留者の受入れもしくは、管理を適正に行った実績があること。かつ、役員もしくは職員の中から、特定技能人材支援計画の実施に関する責任(担当者)を事業所ごとに1名以上選任していること。
②受け入れ企業の役員もしくは職員の中で、過去2年間に中長期在留者の生活度相談業務に従事した経験がある人の中から支援責任者(担当者)を事業者ごとに1名以上選任していること。
③①及び②に該当する者と同程度に支援業務を適正に実施することができるとして、出入国在留管理庁長官が認めるもの。

2.十分に理解できる言語による支援体制が用意できる

3.支援実施状況に係る文書の作成・保管ができる

4.支援の中立性が確保できる
特定技能人材を支援する責任者は(担当者)は中立的な立場にある必要があります。
具体的には、特定技能人材を監督する立場にないこと、そして特定技能受け入れ機関と特定技能人材の間に紛争が生じた場合に少なくとも中立的な立場であることが求められます。

5.支援実施義務の不履行がない
特定技能雇用契約の締結の日前5年以内又はその締結の日以後に、特定技能人材の支援を怠ったことがないことが求められます。

6.定期的な面談の実施に関するもの
特定技能の受入機関は、支援責任者(支援担当者)が特定技能雇用契約の当事者である外国人と、その監督する立場にある者と定期的な面談を実施することが必要です。定期面談は、最低でも3ヵ月に1回以上は行う必要があります。

7.分野に特有の事情に鑑みて定められた基準に適合する
それぞれの分野ごとにも条件が出されている場合があります。その条件については、こちら

登録支援機関の選び方

登録支援機関を選ぶ際には以下の6つポイントを意識して選ぶことをお勧めします。
1.登録支援機関として登録されているか
2.受入れる特定技能人材の母国語に対応しているか
3.定期的に受け入れ企業を訪問しているか
4.所在地が離れすぎていないか
5.支援委託費用が適正か
6.配属後のサポートがしっかりしているか

登録支援機関へ委託するメリット

自社支援の要件をクリアできる場合であっても、費用対効果を考慮して全てを登録支援機関に委託することも可能ですし、社内で人員が不足している部分のみ委託することも可能です。ただし、一部を委託する場合は、支援計画の中で委託した範囲を明確に把握し、自社での支援の漏れが出ないよう注意が必要です。

メリット

1.業務を教えることに専念できる
2.支援にかかる時間を短縮することで、社員の業務負担を軽減できる
3.職場関係者以外が支援することで、悩みを相談しやすくなり、社内トラブル防止につながる。

支援計画の作成と実施に係る時間を短縮することで、特定技能人材と受け入れ機関、双方の業務に割ける時間が増え、業務効率や技術の向上につなげられます。また、第三者である登録支援機関を挟むことで、外国人が悩みを相談しやすくなり、社内トラブルを未然に防ぎ雇用の定着へとつながります。

外国人雇用が進む日本では、特定技能人材を受入れる企業も年々増え続け、それに伴いトラブルも年々増え続けています。登録支援機関に支援を委託することで、登録支援機関としての経験や知識により、色々なトラブルを早期に解決できたり、未然に防いだりすることができます。また、特定技能人材を受入れるための義務的支援や任意的支援を、多くの企業では完全に自社で行うことは難しいといえます。約10項目の義務的支援を網羅し、適切に支援を実施するためには、かなりの時間と労力、そして知識が必要とされます。適正な委託料で責任をもって支援をしてくれる、信頼できる登録支援機関へ支援を委託することが、特定技能人材、受入れ企業ともに、働きやすい体制を整えるために良いのではないかと思います。

この記事を書いた人

森田玲子

日の出医療福祉グループ 社会福祉法人博愛福祉会の登録支援機関の支援担当者
技能実習生の監理団体で監理業務を経験の後、福祉業界で現場管理者を経験。福祉現場での外国人人材の監理・支援への重要性を感じて、日の出医療福祉グループの外国人人材育成、キャリア支援業務に参画した。